あしあと
台風第10号が令和6年9月1日以降、関東に接近し、大荒れとなる恐れがあります。
関東農政局から「台風第10号の接近に伴う農作物等の被害防止に向けた技術指導の徹底について」を参考に、大雨、強風への備えを確認願います。
また、農地・農業用施設の見回りを行う前には気象情報を十分に確認し、身の安全を確保したうえで、人命を最優先に行動するようにお願いいたします。
人命第一の観点から、暴風雨、異常出水時においては、農地や農業用施設等の見回りについては、最新の気象情報を十分に確認し、これらの状況が収まるまで行わないこと。
また、暴風雨等が治まった後の見回りにおいても、増水した水路その他の危険な場所には近づかず、足下等、ほ場周辺に十分注意し、転落、滑落事故に遭わないように慎重に行うこと。
暑熱環境下で作業を行う場合は、熱中症対策として、高温化での長時間作業を避け、こまめな水分と塩分の補給や休憩を取るように心掛けること。
これまでの地震や台風、記録的な豪雨等の影響により被害を受けた地域においては、引き続き、土砂災害に細心の注意を払い、人命を最優先に行動し、二次被害の防止に努めること。
台風が接近、通過する地域にあっては、関係機関の連携を整備し、気象庁の台風情報を基に地域に雨、風等によりどのような影響があるか把握しつつ、地域の品目や生育ステージに応じた対応を速やかに現場に徹底すること。
局地的な大雨が予想される地域においては、ほ場の冠水のおそれがあることから、速やかな排水に備えておくこと。特に、これまで冠水したことのあるほ場や地域については、重点的に対応を進めること。排水ポンプの融通等についても積極的に進めること。
なお、各地方農政局土地改良技術事務所においては、ほ場が冠水またはそのおそれがある場合、排水対策に活用できる災害応急ポンプの貸出を行っているので、活用されたい。
また、低地や川沿いにあるなど、収穫物の保管場所の浸水被害が想定れる場合は、収穫物を浸水の危険がない場所へ移動すること。
病害虫への対策については、ほ場の冠水または浸水、過湿などにより病害虫の被害を受けやすいことから、都道府県病害虫防除所から発表される発生される発生予察情報に基づき、適期防除に努めること。また、防除に必要な農薬の供給が不足しないよう、必要に応じて、農薬の販売店や農業協同組合等に対し、必要な農薬が供給されるように要請すること。
農業用施設や機械が冠水・浸水した場合は、機械・機器等の始動や通電を再開する際には、使用マニュアルなどにより手順や注意事項を確認するとともに、漏電やショートに留意した対応を行うこと。特に、一定程度浸水した農業機械は、スイッチを入れた場合にエンジン破損やバッテリー、電子制御装置等の漏電、発火の危険がある。このため、メーカーによる点検を受けるまではスイッチを入れないこと。
暴風雨、増水等により施設や倉庫等の管理や巡回が十分できないことから、日頃から出入口等の施錠を確認するなど、防犯対策に留意すること。
(1)事前の対策
冠水や浸水の予想されるほ場において、作物の性質やほ場の状況に応じて、冠水または浸水後の排水対策が速
やかに行われるよう、溝切り等の対策を講じるほか、明きょ等を点検・補修等を行っておくこと。
収穫後に自宅倉庫等で保管されている米については、浸水等により被害が発生しないよう適切な場所で保管する
こと。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.水稲については冠水時には排水路等を通じて速やかな排水に努め、排水後は、白葉枯病等の発生動向に留
意し、的確な防除に努めること。
また、冠水被害を受けた稲体は水分調節、肥料吸収等の機能が低下していること、登熟期における台風通
過に伴うフェーン現象は、白穂の発生、登熟不良等を引き起こすことから、根の活力を旺盛に保つよう水
管理を徹底するとともに、応急的に通水し、水分の補給に努めること。
台風の接近に伴う強風や大雨により倒伏や潮風害が起きた場合には、未熟粒や穂発芽等が発生し、品質低
下が懸念されるため、被害の程度と籾の状況を見極めつつ適期収穫に努めるとともに、被害籾は仕分けし
て乾燥・調製を行うこと。
ほ場の冠水リスク等を予め地域のハザードマップ等により確認するとともに、冠水リスクが高い場合には普
及指導員等と相談の上、収穫後の稲わらが他のほ場等に流出・堆積が起こらないよう早期にすき込みや撤
去等を行うこと。
イ.種子については、水濡れがないよう安全な場所で保管する等管理を徹底すること。
ウ.豆類については、土壌の多湿状態が長時間継続すると、土壌中の酸素不足による生育遅延や根腐れを引き
起こすため、早期排水対策に努めること。また、強風等により莢等が損傷した場合には、傷口から病原菌
が侵入しやすくなるため、天候の状況を注視し、必要に応じ速やかに防除を行うこと。
(1)事前の対策
冠水や浸水の予想されるほ場において、作物の性質やほ場の状況に応じて、冠水または浸水後の排水対策が速やかに行われるよう、溝切り等の対策を講じるほか、明きょ等の点検・補修等を行っておくこと。
茶については、摘採期を迎えている場合には、可能な限り、台風が近づく前に摘採を行うこと。また、強風による棚施設の破損や倒壊を防ぐため、事前に棚施設から被覆資材を撤去すること。やむを得ず、被覆資材が撤去できない場合は、風で広がらないように強く縛って固定し、被害の軽減に努めること。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.潮風害が懸念される場合には、できる限り速やかに散水により除塩すること。
イ.かんしょやばれいしょについては、ほ場が冠水、浸水した場合、生育遅延や塊茎腐敗等を起こしやすいの
で、速やかな排水に努め、長時間の滞水を避けること。また、湿潤ほ場での収穫は行わないこと。
ウ.てん菜については、ほ場が冠水、浸水した場合、生育不良等を起こしやすいので、速やかな排水に努め、
長時間の滞水を避けること。また、過湿により病害の発生が助長されるので、状況に応じた適切なほ場管
理や薬剤散布を行うこと。
エ.さとうきびについては、台風の通過後、表土の流出により根浮き等がみられることがあるので、この場
合、速やかに土で被覆すること。
また、塩害が懸念される場合は、スプリンクラー等のかん水施設を活用し、葉面の除塩に努めること。
オ.茶については、強風により葉ずれや葉いたみがあった場合には、殺菌剤を散布し病害の発生を防止すると
ともに、幼木園等において風により幹が回されたものは早めの土寄せや敷き草を行い地際部や根を保護す
ること。
天候が回復した後、茶工場や防霜ファン、棚施設、茶園の排水溝や法面等を点検し修復を行うこと。
カ.そばについては、ほ場が冠水、浸水した場合、出芽不良や根腐れによる生育不良等を起こしやすいので、
速やかな排水に努め、長時間の滞水を避けること。
キ.こんにゃくいもについては、冠水、浸水の被害を受けた、または土砂の流入のあったほ場では、速やかな
排水に努めるとともに、強風による葉の損傷等が発生した場合には、病害の発生を防止するため、状況に
応じた適切なほ場管理や薬剤散布を行うこと。
(1)事前の対策
ア.ほ場内の早期排水対策として、あらかじめ溝切り、畦立て等の管理作業に努めること。また、台風による風害・潮風害のおそれのある場合
には、べたがけ資材の利用等により被害回避に努めること。
イ.定植後の幼苗期は、支柱等により倒伏を防止すること。支柱やネットを設置している作物は、確実に固定されているか確認し、必要に応じ
て補強しておくこと。
ウ.は種や定植を予定している場合は、台風の通過前の作業を避け、通過後に行うこと。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.冠水や浸水等を受けたほ場においては、速やかな排水に努めること。また、土寄せ、追肥、液肥の葉面散布等により生育の回復に努めると
ともに、病害虫の発生を防止するため、折損した茎葉の除去と適切な薬剤散布を行うこと。
イ.防除用設備(配管、水槽、スプリンクラー、防除機材等)が破損するなど、既存の管理・防除手段が使えなくなった場合には、他の管理・
防除設備等の手配など、代替手段の確保に努め、適期防除を徹底すること。
ウ.果菜類では、根傷みによる草勢低下を防ぐため、摘果や若どりにより着果負担を軽減すること。
エ.生育初期において被害を受けた場合には、予備苗による植替えや再は種を行い、被害の軽減に努めること。また、被害が著しい場合には、
他の品種または作物に転換することも検討すること。
(1)事前の対策
ア.強風に備えて事前に防風網や果樹棚支柱、マルチ資材の点検・補修を行っておくこと。また、倒伏しやすい樹体は支柱により補強しておく
こと。
イ.収穫可能な果実はできる限り収穫しておくこと。その際、農薬散布から収穫までの経過日数に留意すること。
ウ.強い風雨が予想される地域では、かんきつかいよう病及び黒点病、りんご及びなしの黒星病、もものせん孔細菌病等の発生・感染拡大が懸
念されるため、防除基準に基づき薬剤散布を行うとともに、既に罹病葉等がある場合には園外へ処分すること。
エ.排水が速やかに行われるよう園地周辺の集排水路の点検、清掃を行うこと。特にマルチ栽培の場合は、雨水が土中に浸透せず園外への排出
量が増加し、土砂崩れや石垣の崩壊等につながる可能性があるため、排水路や排水溝の点検、清掃に留意すること。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.強風等により落葉した場合は、被害程度に応じて日焼けや樹脂病等の防止のための白塗剤を塗布すること。倒伏した場合は、健全な根を切
らないようにできる限り早く引き起こし、支柱を添えて固定すること。枝裂けした場合は、針金、ボルト等で結合し、傷口に塗布剤を塗るこ
と。被害により樹勢が弱まっている場合は、薬害が発生しないように留意しつつ病害虫の防除を実施するとともに、樹勢に見合った適切なせ
ん定、施肥及び摘果を実施すること。
イ.落下した果実については、農薬散布から収穫までの経過日数に留意し、必要に応じて低温保管、選別の徹底、早期出荷等に努めること。
特に、りんごについては、果汁のパツリン汚染を防止するため、土壌に触れた果実は原則果汁原料用には利用しないこと。やむを得ず利用す
る場合には、低温保管、早期利用、腐敗果の除去等に努めること。
ウ.潮風害を受けた場合は、スプリンクラー等のかん水施設を活用し、直ちに水をかけ除塩作業を行うこと。除塩できずに落葉、落果等の被害
を受けた場合には、被害程度に応じて液肥の散布、摘果、白塗剤の塗布等を実施し、晩秋期以降は、秋枝の処置に留意した上で、冬季の寒害
対策として、寒冷紗や不織布等により防寒に努めること。
(1)事前の対策
ア.露地栽培の草丈の低い花きについては、寒冷紗等で被覆し、草丈が高く支柱を立てている花きについては、支柱の点検・補強を行い、風害
に備えること。
イ.ほ場内の早期排水対策として、あらかじめ溝切り等の管理作業に努めること。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.冠水または浸水の被害を受けたほ場においては、速やかな排水に努める。
イ.倒伏した株は早急に立て起こし、茎や花穂の曲がりを防止するとともに、折れた茎葉の除去、適切な薬剤散布等により、病害の発生抑制に
努めること。
ウ.天候が回復した後、被覆資材、支柱、防虫ネット等の栽培施設や資材の点検及び修復を行うこと。特にキク等の栽培に係る電照・補光関連
施設(電球、タイマー等)については、速やかに作動状況の点検を行うこと。
エ.生育初期において被害を受けた場合には、予備苗による植え替えや再は種を行い、被害の軽減に努めること。
オ.潮風害を受けた場合には、できる限り速やかに散水による除塩作業を実施するとともに、肥料が流亡した場合は、土壌分析を実施し、適正
量の肥料を施用する。また、施設栽培においては、台風通過後、強い日射により園芸用施設内温度が急上昇し、高温障害を生じやすいので、
フィルム巻上げ等の換気操作を行うこと。
(1)事前の対策
ア.ハウスの側面、妻面、屋根面の補強資材を設置し、構造強化を行うこと。また、腐食やサビがないか、留め具等に緩みがないか等点検し、
必要な補修を行うこと。
イ.ハウス周辺について、強風時の飛来物による損傷を防ぐため、片付けや清掃を行うこと。燃料タンクやガスボンベ等がしっかりと固定され
ているか点検すること。
ハウス周辺は、雨水の滞留やハウス内への侵入がないよう整備すること。谷樋や縦樋、排水溝は清掃を行い、速やかに雨水が排除できるよ
うにしておくこと。
ウ.強風時の被覆材の破損や剥離、ハウスの出入口の破損等によるハウス内への風の吹き込みによる被害を防ぐため、点検や必要な補修等を行
うこと。ハウスの軒・棟・妻面付近では局部的に風速変動が大きくなるので入念に点検すること。強風時は室内外の気圧差により被覆材が膨
れ、飛散するおそれがあるため、換気扇による減圧に努めること。倒壊の危険がある場合は被覆材を除去しておくこと。特に切断除去する場
合は、事前に農業共済組合等に連絡すること。
エ.停電に備え、手動換気やカーテンの手動開閉等の作業内容の手順を確認しておくこと。また、かん水用水の貯水を行うとともに、非常用電
源が確保できる場合は事前に動作確認を行っておくこと。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.冠水または浸水したほ場については、速やかな排水を行うこと。
イ.台風通過後はハウス各部を点検し、必要な補修を行うこと。構造体のボルトや筋かい等は適切な方法で締め直すこと。
ウ.被覆材や支柱、防虫ネット等の資材の点検や、必要な修復等を行うこと。環境制御装置や補光関連設備等についても、速やかに作動状況を
確認すること。
エ.台風通過後は強い日射によりハウス内温度が急上昇し、高温障害を生じやすいため速やかに換気操作を行うこと。停電が伴う場合は手動、
または非常用電源の作動で対策をすること。
1.ほ場がかん水しないように明渠を掘る等、排水対策を行う。また、台風後に病害が発生しやすいので、よく
観察し、必要に応じて防除指針に従い殺菌剤を散布する。
(1)事前の対策
ア.畜産施設については、損傷、倒壊等を避けるため、必要に応じて補修を行うこと。
イ.大雨による畜産施設への浸水のおそれがある場合は、明きょの施工等により排水に努め、家畜への被害が
生じるおそれがある場合は、事前に避難場所を確認し、状況に応じて家畜を避難させる等の適切な処置を行
うこと。
家畜の避難に際しては、積込み前後の車両消毒、荷台における体液等の漏出防止措置並びに運搬後の車両及
び資材の消毒等の防疫対応を徹底すること。なお、避難先から元の農場へ家畜を戻す際は、避難時と同様に
消毒等の防疫対応については徹底すること。
ウ.各地域において、行政機関や生産者団体等との連携により、あらかじめ停電や断水等の対応を確認し、被
災時には自家発電機による搾乳や生乳冷却等について、早急に対応できるよう努めること。
エ.飼料・燃料などについては、不測の事態を考慮し、家畜を少なくとも1週間以上飼養するために必要な分
量を最低在庫量として維持するよう、計画的な生産や購入に努めること。その保管場所については、河川の
増水や土砂崩れのリスクも考慮し、分散して保管するなど工夫すること。また、飲水についても貯留タンク
の設置やくみ上げポンプを準備するなどの対応を行うよう努めること。
オ.天気予報などにより天候の状況を注視し、飼料作物の管理・収穫作業等の計画を変更するとともに、収量
や品質の確保のために、その調製法や時期についても、例えば乾草からサイレージに切り替えるなど臨機応
変な対応を行うこと。特に飼料用とうもろこしについては、台風が接近、通過すると予想される場合、糊熟
期以降であれば、収穫適期に達していなくても、被害軽減のために収穫作業を一部前倒して開始する
ことも検討すること。また、降雨による冠水に備え、ほ場に明きょや暗きょを整備するなど、排水対策を講
ずること。
(2)被害拡大防止のための対策
ア.畜産施設及び家畜
(ア)天候が回復した後、直ちに畜産施設内及びその周辺の排水を行うよう努めること。また、土砂が流入
した場合には、再度の土砂流入等の事故に十分注意しつつ、土砂を除去するよう努めること。
(イ)畜舎、牧柵、防鳥ネット等の施設に破損、汚染がないか確認し、必要に応じて補修、洗浄、消毒を行
うよう努めること。飲水に適した水の給与や飼養家畜の健康観察など、家畜伝染病予防法(昭和26 年法
律第166 号)に基づく飼養衛生管理基準に沿った衛生管理を徹底し、家畜の伝染性疾病の発生予防措置
を講じるよう努めること。
(ウ)水濡れ、土壌の付着などにより品質が低下した飼料の給与は、家畜への健康被害や畜産物を通じた人
の健康への影響の懸念がある場合は中止すること。健康への被害や影響が明らかでない場合には、家畜
保健衛生所などの指示を仰ぐこと。
飼料の品質が低下しているもののこれらの影響が想定されない場合で、代替飼料が確保できないなどの理
由によりやむを得ず給与する場合には、栄養価、嗜好性等にも配慮し、家畜の生産性が低下することの
ないよう注意すること。
イ.飼料作物及び稲わら
(ア)冠水や浸水等の被害を受けたほ場においては、速やかな排水に努めること。
(イ)倒伏、冠水などにより、飼料作物が被害を受け、減収が懸念される場合などには、収穫の前倒し、次
期作の作付けの前倒し、永年性牧草の刈取回数の増加、稲わら等の農産副産物の確保等が可能かを検討
し、できる限り良質な粗飼料の確保等に努めること。
参考資料